日本中国通訳案内士協会(CGA)は11月13日(土)、日中の文化交流に長年携わってきた唐啓山先生を講師に招き、「如何向内行外行介绍日本的(美术)博物馆」をテーマにオンライン研修を開催しました。近年、日本の浮世絵や草間彌生らアーティストの作品が若い人を中心に中国で知られ、人気を集めています。中国で見られない貴重な中国書道や絵の作品が日本で特別展示されると、一目見ようと中国からわざわざ来日する観光客も少なくありません。また、博物館や美術館をどのように紹介したらいいのかは、多くのガイドにとって難しい分野です。そのような中、当協会内外から26名の方が参加され、有意義な勉強の機会となりました。
唐先生は北京大学で考古学を専攻し、1989年に来日後、名古屋大学で仏教美術史を専門分野としてご研究される一方、中国の作品を日本で展示したり、日本の作品を中国で広めたりと、長年多くの日中大規模イベントに携わっていらっしゃいます。そのご経験をもとに、日中両国の博物館の規模、歴史、管理機関、所蔵物の違いなどについて講義をしていただきました。先生は「日本の博物館、美術館、資料館、文庫などはどれも、中国における博物館の機能に相当する。中国においては、博物館と美術館はそれぞれが異なる役割を担っている」とPPTを用いて教えてくださいました。当日は中国語がメインでしたが、重要なところや専門用語は日本語での補充説明があり、中国語のリスニングに自信のない会員も安心して受講できる講義でした。
また、唐先生はガイドの目線に立ち、お客様のニーズによって重点的にご案内すべき場所や内容が異なる点に着眼し、おすすめの博物館や美術館をいくつかご紹介くださいました。中国で見られない仏像などは特に人気があるので見てもらった方がいいとのアドバイスもあり、「日本の文物をインバウンドに紹介する時、その背景や知見をちゃんと説明した上で案内すると、より興味を持ってもらえるはず」と強調しました。
先生は陶磁器にも触れ、来日当初は日本のわびさびの美を理解していなかったというご自身の体験をユーモアを交えて説明し、笑いを誘う場面もありました。日本と中国の美に対する意識の違いについて、日中のそれぞれの特徴がわかるような陶磁器の写真を比較しながら、日本では素朴な美を追求するが、中国では完璧さ、華やかさが好まれると述べられ、聴講していた我々は目から鱗の思いでした。
今回の研修を終え、会員から「中国語を用いた研修会が少ないが、今日はリスニングの練習になったし、中国語で日本文化を紹介する言い回しを習うことができてよかった」、「特定の日本文化を研究し、その素晴らしさを中国人だけでなく日本人にも改めて伝えようとしている姿勢に敬服します」などのコメントがありました。
コロナ禍が早く収束して、習った知識を生かす日が一日でも早く訪れることを願っています。